復原/Restoration

復原はその名のとおり、彩色や塗装を元の姿に戻す作業です。彩色の場合は事前の各種調査に基づいて、同等の絵具を使用して完成予想図にあたる「見取図」を製作した後、専門家との協議を経て最終的な仕様を決めて施工します。実際の仕様決定や施工に際しては史実や分析結果のみならず、現代の保存に関る管理環境に必要な強度や耐久性、メンテナンス性等の条件、また各種の規制や需給バランスのために既に従来と同等の材料や用具が失われてしまっているケースにも対応しなければなりません。

完全に元の姿を知り、同じく再現することに絶対や正解はありませんが、想像力と客観性のバランスを保ちながら、現在の条件下で可能な限り元の姿に近かったであろう彩色や装飾を体現することに努めています。

彩色復原

各種の調査に基づき、同材料、同技法を基本とした伝統技法によって、彩色の復原を行います。主にバインダーに膠液を用いた絵具で絵画や文様を描きます。

建造物の構造部材や板面に直接描く「直彩色」、和紙に描いたものを部材に貼る「紙彩色」、金箔を押した彫刻等で、部分的に色を付ける「生彩色(いけざいしき)」等の手法があります。

彩色強化紙カバー 特許出願済

建築部材と同じ形状のカバーの上に、伝統技法による彩色復原を行い、部材の上から被せて現存の彩色の保護と、復原による美観の再現を同時に行う新しい手法です。

カバーは漆で含浸形状固定化した強化紙製で、軽く耐久性に優れ、脱着が可能です。

文化財における保存の意義と、彩色復原による装飾や美観の意義を折衷できる案として開発した手法です。

漆塗り

漆の木から採れる樹液を主原料とする、天然樹脂塗料を使用した、日本を代表する塗装や装飾に関る伝統技術です。長い歴史の中で高度に洗練され、美しい表現のための様々な技法や材料、用具が生み出されています。


単色塗り

バインダーに膠液を用いた塗料を使用する伝統技法です。神社等における丹塗りや板壁の白塗等、いわゆる単一の色を塗る塗装手法です。

チャン塗り

バインダーに荏胡麻油に松脂(チャン)を加えたチャン油を用いた塗料を使用する、塗装の伝統技法です。

資料や実例が少なく、廃れた技法とされていましたが、近年の分析技術の向上と古文書の研究から、実際には過去に広く使われていたことが分かってきました。

桐油彩色

バインダーに桐油を用いた塗料を使用する、塗装や彩色の伝統技法です。

中国を中心に東アジアから東南アジアまで広く行われてきた塗装方法ですが、日本では漆と膠の用法が主となり、桐油を用いた塗装は沖縄県だけで見ることができます。


箔押し

絵画や彫刻において、金箔やその他の金属箔を貼ることを指します。バインダーとして、漆や膠を用います。

美観修復

木材や石材における損傷や風化、あるは別の補強等の修理のため、外観が損なわれたものについて、周囲の環境と馴染むように修復、調整する手法です。

美術工芸品修理

各種の美術工芸品について、部分的な欠損、退色や変色、汚損といった外観上の問題に対して、美観の観点から部分的な復原や調整を行うものです。素材や製法の特性上、同等の材料での修理が可能な場合はそれらを使用し、またそうでない場合は樹脂材料等を適宜使用しますが、現存部分との調和を計りながら違和感が無いように仕上げます。