剥落止めの基本手順

剥落の種類

剥落の種類には大別して、塗膜がひび割れて浮上がったようになる層状剥離と、表面が粉を吹いたようになる紛状剥離があります。

層状剥離の例

紛状剥離の例



彩色で用いる絵具

絵具や塗料は、顔料(色の粉)とバインダー(液状の接着成分)を混ぜ合わせて作られているため、経年劣化によってバインダーの接着力や結合力が落ちてきた時に、下地から剥がれたり、塗膜がバラバラになるといった状態が生じやすくなります。

絵具の材料例(左上=膠、左下=膠液、右=顔料)

顔料と膠液を混合して絵具を作る



剥落に至る過程

1. 絵具の塗布

2. 塗布後はバインダーが十分な接着力を保っている

3. 経年劣化によりバインダーの接着力や柔軟性が落ちて剥落が生じる



剥落止めの手法

剥落止めは、経年劣化によって剥離が生じた塗膜を再び基材に接着する手法で、基本的には保存したい塗膜と同種のバインダーを使用します。剥落止めの基本は、状況に合わせて最適な用具で、塗膜と基材(木地)の間にバインダーを入れることです。天然のバインダーは気温に対する粘度の変化が大きいため、常に濃度や温度に注意しながら、既に脆弱になっている塗膜や、析出している顔料粉をできる限り動かさないように、注意を払いながら作業を行う必要があります。

層状剥離の修理例

1. 木地から塗膜が浮いた状態

2. 細筆や注射器で膠液を塗膜の裏側に注入する

3. 塗膜を圧着して木地に再接着


紛状剥離の修理例

1. 顔料が木地から浮いた状態

2. 刷毛やスプレーで膠液を全体に塗布

3. 全体を圧着して木地に再定着



施工例

五重塔の内部彩色


頂相