保全・保存/Conservation

文化財修復における基本的な考え方として、現状の維持とそのための環境整備があげられます。

しかし既に外観が大きく損なわれているケースでは、劣化を一時的に遅らせる処置だけでは、美術的あるいは宗教的価値が損なわれることもあり得ます。また建物や彫刻、石塔や金具など往々にして機能や強度にも支障を来しているものが多く、存続のために外観を犠牲にしなければならないケースもあります。現状を維持しつつも、後世での修理のしやすさを考慮すると共に、関係各者や施主、所有者とも意見交換を行い、文化財の意義を保ちながら適切な美観を維持する手段も探り続けることが重要と考えます。

剥落止め

経年劣化で亀裂や剥離を生じたり、粉状になった塗膜を基材に再定着する手法で、文化財における保存修理の基本となっています。

彩色塗膜採取法

特許第4787984号

現存する塗膜を剥離して、別途保存する手法です。

表層の塗膜を剥離した際に、昔の彩色の痕跡が現れることもあり、調査に関る手法としても有用です。

クリーニング

彩色や漆箔の表面に付いた埃や油煙等を除去し、美しい外観を取り戻します。

新調が必要とされる場合でも、クリーニングで美観を取り戻せる場合があり、本来の姿を残しながら、コスト削減ができるケースもあります。