単色塗り

単色塗りはその名のとおり、文様や絵画を描かず単一の色を塗装する手法の中で、膠をバインダーにした技法を指します。神社の社殿や、木造建築における垂木や濡れ縁などの木口塗りでよく見られます。

礬水引き

礬水引きとは礬水を塗布する意味で、建築塗装の場合は木地の吸込みを抑制し、塗装の密着性を上げる為に行います。(木地固めと呼ぶ場合もあります)

実際の施工では、予め清掃や脱脂(アルコール等で表面を拭いて、油分を取除く)を行った後に、吸込みが収まるまで複数回塗布と乾燥を繰返します。

隠蔽性やアク止めの効果は弱いので、材の状態や施工条件によっては予め近代的な手法で、下地の調整をする必要が有ります。



塗料作り

塗装に必要な塗料を作ります。塗料は顔料に膠の水溶液を混ぜて作りますが、膠液は作り置きに適さない(接着力の低下や腐敗が起り易い)ため、塗装直前に都度作りますが、色によって顔料の比重や粒度が異なるため、溶き方も個別に異なります。

顔料を溶く際は、顔料が満遍なく膠液に拡散するように、一度に膠液を入れず、一旦団子状にできる程度に練り、何度も叩いたり伸ばす等して、十分に膠分を顔料に馴染ませた後、膠液と水で溶いて必要な濃度の塗料に仕上げます。



塗装

刷毛で薄くムラなく塗装することを、複数回繰返します。単色なので一見単純に見えますが、伝統材料の特性を知り、塗装環境を加味しながら作業を進める必要があります。

例えば胡粉(白)は塗った直後は隠蔽性が無く下地が透き通って見えますが、乾燥が進むにつれて白く発色するため、最初から隠蔽しようと厚塗りすると、割れや剥離の原因になります。

また膠液は気温によって粘度が敏感に変化するため、粘度が上がった場合に安易に膠液や水を加えて希釈すると、膠の濃度が上がりすぎて変色を起こす膠焼や、膠液の濃度低下で密着不良や、耐久性が著しく落ちる原因になります。



施工例

御殿の破風板・垂木・濡れ縁

神社の社殿