調査の基本は目視や各種の科学的手法を用いた調査で、それらと併せて時代や様式、地域性等における類例も調査します。近年では人間の経験値よりも客観的データが重視されがちですが、部分的に抽出されたデータを繋ぎ合わせ、装飾の意味や制作の手続きを含めた姿を導き出すためには、やはり豊富な経験値が不可欠です。一方で、経験による固定概念に縛られず、実存する対象物をつぶさに観察し次世代に正しい情報を伝えることが重要だと考えます。
各種の分析装置を使用し、絵具の顔料やバインダー(接着成分)を特定します。
試料にX線を当て、含まれる元素の種類と量の情報を得る手法で、主に顔料を特定するために利用します。
同じくX線により、超高倍率で物質の表面を観察できる電子顕微鏡と一緒に使います。
試料に赤外線を当て、得られるスペクトル情報から、分子の状態を分析する手法です。
主としてバインダーにおける膠とカゼイン、または漆と油の種別の特定に利用します。
試料を高温で気化させ、そこに含まれる成分の情報を得る手法です。
主としてバインダーにおける膠とカゼイン、または漆と油の種別の特定に利用します。
比較的低倍率の顕微鏡を使用して、試料をそのままの状態で観察する手法で、主に顔料や塗膜片の観察を行います。